出星前夜
「出星前夜」小学館 刊
飯嶋和一さんの新作です。
扱っているのは一般的に言う島原の乱ではありますが、
飯嶋さんらしく、細部を丁寧におさえながら積み重ねて行くスタイルで、
あぁ、やっぱりこの方の小説は好きだなぁと再認識。
近年、島原の乱については、
単なる禁教にたいするキリシタンによる反乱ではなく、
幕藩体制における諸領地経営の実態や飢饉など
様々な要素が混交しあい大きな事件へと発展したと考えられています。
天草四郎についての描写がかなり素っ気ないものに感じるのは
そのあたりの成果をふまえているものと思われます。
領主に対し反乱を起こし、城に立てこもり
結果として、三万八千人にものぼる住民がほぼ全滅させられ
ひとつの地域が滅亡させられたという歴史的事実を、
いくつもの線をひきながら、小さな流れが集まり
次第に大きなうねりとなり、個人ではどうする事も出来ない
布置へと結実して行く様を、淡々と叙述して行きます。
明確な主人公はいませんが、今回も魅力的な人物が出てきます。
物語、とりわけ大きな物語に対する抵抗感というか違和感が
僕はとても強いので小説ってほとんど読まないのですが、
この方だけは別です。
島原の乱をあつかった小説としては、
堀田善衛さんの「海鳴りの底から」と双璧をなすのではと思えます。
江戸期は、最近ではともすれば理想郷のように持ち上げられやすいですが、実際には、身分制や移動の制限や、一揆などまだまだわからない事柄も多 く、常に歴史の読み直しが行われているので、こういった総決算的な形でまとめて世界像を提示していくのはなかなか難しいと思いますが、著者の力量のすごさ を改めて思い知りました。
次読めるのは何年後なんだろう・・・。




















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